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Vol. 17

床屋だった店の内装をそのまま残す
懐かしさが漂うバー


横浜野毛 バー(BAR)
「日の出理容院」




小さな居酒屋やバーがひしめきあう野毛のまち。その外れに、床屋だったもとの店の内装をそのままいかしているバーがある。店の名前も変えずに残している。

去る2月1日に、横浜駅から元町、中華街へと結ぶ「みなとみらい線」が開通した。それによって、みなとみらい21地区、馬車道、元町、中華街といった、横浜を代表する観光スポットが一層、東京に近くなった。新しい人の流れを呼び込んでくれるとあって地元の期待は高いが、その影で、70年余りの歴史をもつ東急東横線の桜木町駅は、ひっそりと長い役目を終えた。
そんな華々しい騒ぎをよそに、駅の反対側にある野毛のまちには、これまでと変わらない時間が流れている。鄙びてて、古くて懐かしい、でも、どこかあたたかい時間である。

野毛といっても、野毛本通りから脇道を一本入った奥の方に、バー「日の出理容院」はある。もとは床屋だった店の内装と名前を残して開店したのが2002年の7月。5席ほどのカウンターに、テーブル席が2つ。あとは、スタンディングとなる。一通りの洋酒は揃っていて、ほぼ均一の500円。支払いはキャッシュ・オン(前払い制)で、注文のたびに払うシステム。フードメニューはなく、お通しに乾き物が添えられる。チャージはつかない。
客層はさまざま。場所柄、サラリーマンが多いが、女性客もくる。ゆっくりと一人で飲む客もいれば、連れ立って2〜3人で訪れる客もある。隣り合わせた客同士で話が弾むこともある。


店の看板は出していない。入り口の硝子戸からもれる灯りから、かろうじてバーだと分かる。一見、人を寄せつけない感はあるが、ひとたび中に入れば、懐かしい空気に包まれる。
日に焼けた壁の色、鈍く光る柱、天井に空いた大きな穴、幾何学模様の窓硝子。錦絵、スナップ写真、ろうそくの灯り…。引き戻された時間の中で、気がつくと、静かな気持ちでグラスを空けていた。
店は、数年前までは、あるおじいさんが一人でやっている床屋だった。壁や床には、今も当時の鏡や椅子の痕がうっすらと残っている。ゆったりと年月が重ねられたのだなと、少しばかり思いを馳せてみる。場所がもつそのままの雰囲気を大切にしたいと、店のマスターはいう。

野毛の時間は“流れる”のではなく、“漂っている”という方が相応しい。世の中の流れに逆らうことなく、それでも、どこか漂っているような、そんなまちである。この店もどこか似ている。


(横浜ベイサイドウォッチ2004年3月4日号 取材・文 タカデラクリコ)


近所の野良猫コタロー君も店の常連。ふらりと現れては、静かに座っている
●DATA
日の出理容院(ひのでりよういん)
住所 横浜市中区宮川町1-8
(JR線・横浜市営地下鉄線 桜木町駅より徒歩8分)
TEL 045-253-3095
営業時間 18:00〜2:00
定休日 日曜日、祝祭日
メニュー ●ドリンクメニュー
 生ビール、バーボン、スコッチ、ラム、ジン、リキュール各種。通常は500円から。
 水・ソーダなどで割った場合は600円からとなる。

●フードメニュー
 なし

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